人工関節センター
- 最新の知識や技術による人工股関節や人工膝関節手術を提供
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高齢化社会の中で、変形性関節症や関節リウマチなど、関節に関連する痛みにお悩みの患者さんは増加しています。比較的軽度な症状の患者さんは、消炎鎮痛剤や関節注射、筋力トレーニングなどの保存的治療によって症状を軽減できますが、関節破壊が進んだ患者さんに対しては、痛みの軽減と関節機能の回復を図るために人工関節置換術が広くおこなわれています。現在の人工関節手術は長期にわたる成績が向上しており、20年以上の耐久性が期待されています。
このたび、さくら総合病院では人工股関節や人工膝関節手術に関する最新の情報を迅速に取り入れ、患者さんに対してより質の高い医療を提供するために、人工関節センターを開設しました。
股関節・膝関節専門外来
水曜日午後にセンター長 田中医師による股関節・膝関節専門外来を開設しております。
当外来では、当センターで手術をご検討中の方はもちろん、膝や股関節の手術に関して更に詳細な情報をお求めの方や他の医療機関で通院中の患者さんに対してもセカンドオピニオンを提供しております。
何かご質問やご不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。
診療日時
毎週 水曜 | 午後 14:00~16:00(事前予約制) |
0587-95-6711
※ 紹介状の有無を問わずお電話でご予約いただけます。
専門チームによる手術
当院では、主に股関節・膝関節の人工関節手術を実施しております。手術は股関節・膝関節の両方において、2000例の執刀経験を持つ田中医師が担当いたしますが、人工関節の手術においては執刀医だけでなく、助手や手術室の看護師から成る手術チーム全体による素早くかつ清潔な手術操作が要求されます。
そのため、手術介助を担当する器械出し看護師も、1500例以上の人工関節手術の経験を有する専門看護師が担当しております。
股関節・膝関節の手術について
股関節の手術について
当院では、人工股関節全置換術(THA)において、大腿骨側では原則として金属性のポリッシュ・テーパーステムと呼ばれる機種を用い、骨セメントで固定します。このステムは40年以上にわたり優れた長期成績を示しており、現在では最も広く使用されているセメント固定ステムです。
一方、骨盤側では、患者さんの骨の状態に応じてセメントレスカップ(金属製)とセメント固定カップ(ポリエチレン製)を使い分けています。骨盤側の骨欠損が軽度な場合にはセメントレスカップを使用し、骨欠損が重度な場合にはセメント固定カップと骨移植を併用して対処しています。手術は通常1時間半程度で、通常手術の翌日から全体重をかけた歩行練習を開始し、2週間程度で退院が可能です。
股関節の痛みが両側で強い場合には、両側同日手術も行っており、この場合も翌日から歩行が始まり、3週間で退院できます。
特殊な手術として、先天性股関節脱臼後の高位脱臼股に対する大腿骨短縮骨切り併用THAや、骨欠損の大きな初回人工股関節や磨耗・ゆるみをきたした人工股関節の入れ替えなどに際して、Impaction Bone Grafting法(細片化した骨を強固に圧迫・充填する骨移植法)を用いた手術も行っています。
近年注目されている股関節唇損傷に対する股関節鏡手術や、臼蓋形成不全に対する骨切り術も取り入れており、患者さんそれぞれの病態に応じた最適な治療をご提供しております。お気軽にご相談ください。
膝関節の手術について
人工膝関節全置換術(TKA)では、BCS型と呼ばれる安定した膝の曲がりを得られる機種を用い、セメントで固定します。手術は片側のみの場合、約1時間15分程度です。通常、手術の翌日から全体重をかけた歩行練習が始まり、約2週間で退院が可能です。ただし、TKAの場合、膝の可動域に制限があり、平均的な膝の曲がりは約120度です。手術後は正座は難しく、イスを中心にした生活に切り替える必要があります。
膝の痛みが両方とも強い場合には、両側同日手術も行っており、この場合も翌日から歩行が始まり、約3週間で退院が可能です。
また、膝関節の変形が比較的軽度で内側に関節破壊がある場合には、単顆置換型人工膝関節(UKA)や高位脛骨骨切り術(HTO)も実施しています。UKAの場合、膝の曲がりが平均で約135度可能であり、正座ができる患者さんもいます。入院期間も約8日間で済みます。HTOの場合も近年の手術法の改良により、約3週間で退院が可能となりました。どちらの手術も通常1時間以内であり、輸血は必要ないため、膝関節の変形が進行する前にUKAやHTOを検討することができます。
病状に応じて関節鏡手術なども行っておりますので、ぜひご相談ください。
麻酔および輸血について
麻酔について
麻酔は原則として、専門の麻酔科医が担当いたします。人工股関節および人工膝関節の手術では、通常は腰椎麻酔(一般的には下半身麻酔と呼ばれます)に加え、全身麻酔も併用して行ないます。患者さんのご希望をうかがった上で、最適な麻酔方法を選択いたしますので、お気軽にご相談ください。
近年の医学の進歩により、高齢者の方でも手術が安全に行えるようになりました。全国の人工関節手術の調査によれば、人工膝関節の手術を受ける患者さんの中で最も多いのは70代で、次いで80代となっています。年齢に関わらず、手術を諦める必要はありません。どうぞお気軽にご相談ください。
輸血について
人工股関節(THA)の場合、通常の手術中においては約200~400mlほどの出血が見られます。一方、人工膝関節(TKA)の手術中にはほとんど出血がないものの、手術後に片方の膝で約600mlの内出血が生じることが報告されています。
当院では、合併症を回避するために必要に応じて自己血輸血(手術前に患者さん自身の血液を採取し、手術中や手術後の輸血に利用する方法)を行っており、これにより同種血輸血(他者の血液を輸血すること)をほとんど回避できています。
手術前後のリハビリテーションについて
当院のリハビリテーションセンターでは、理学療法士(PT)および作業療法士(OT)が患者さんのリハビリを専門に担当しています。手術前には身体計測等の評価をおこない、手術後は翌日からリハビリを開始し、患者さんの安静による合併症や機能の低下を最小限に抑えるよう努めています。人工関節センターに所属するPT2名が主導し、早期の社会復帰をサポートいたします。
人工股関節のリハビリテーションについて
当院では手術の前日から理学療法士(PT)・作業療法士(OT)が患者さんに対し、手術後の合併症予防のための指導を行い、早期の離床を促進します。手術の翌日からは関節の可動域訓練や筋力訓練、歩行訓練を始め、数日以内には病棟内での歩行が可能になり、退院時には独歩または一本杖での安定した歩行を目指します。
同時に、脱臼の危険性のある肢位に関する指導を行い、実際の日常生活動作の訓練も浴槽やトイレ、ベッドなどで行ないます。必要に応じて、住宅改修や福祉用具の提案、日常生活動作に関するアドバイスも行ないます。
人工膝関節のリハビリテーションについて
人工股関節のリハビリテーションと同様に、手術の前日から理学療法士(PT)が術後の合併症予防を指導し、なるべく早い段階での離床を目指します。手術の翌日から関節の可動域訓練や歩行訓練をスタートし、数日以内には病棟内での歩行が可能となり、退院時には独歩または一本杖を使用しての安定した歩行を目指します。
同時に、人工股関節のリハビリテーションと同じく、住宅改修などの提案も行ないます。患者さんの生活スタイルに合わせて最適なサポートをご提案させていただきます。
人工関節の課題と合併症について
現在の人工関節は、90%以上の患者さんにおいて20年以上の耐久性が報告されていますが、それでも合併症がゼロとは言えません。まず、人工関節の問題として挙げられるのは、人工関節の磨耗とゆるみです。磨耗が進むと人工関節周囲の骨の破壊が生じ、入れ替えが必要になることがあります。ゆるみは、人工関節と骨が接触する箇所で、骨が脆くなったり吸収されたりして、人工関節が不安定になる状態を指します。ゆるみが著しい場合も人工関節の再手術が必要となります。
他に、最も治療が難しい合併症の一つとして、術後感染が挙げられます。感染が発生すると人工関節の周囲の細菌には抗生物質に届きにくくなるため、治癒が難しくなります。感染は手術直後だけでなく、数年以上たってからも発生する可能性があります。人工関節の感染の場合、通常外科的治療が必要で、時には人工関節の抜去が必要となります。
また、人工股関節の場合、正常な股関節よりも骨頭が小さいため、脱臼のリスクが高まります。一定の角度以上に曲げたりひねったりすると、脱臼する可能性があり、頻繁に繰り返す場合は再手術が必要となることがあります。
一般的な手術に伴う合併症としては、心不全や肺炎などが考えられますが、特に注目すべきは血栓性肺塞栓症です。これは下肢の静脈にできた血のかたまりが肺の血管に詰まる病気で、突然死を引き起こすことがあります。過度の安静が血栓の原因となるため、当院では手術翌日からの歩行練習やフットポンプを用いた下肢のマッサージを行い、必要に応じて抗凝固薬を使用して予防に努めています。
術後の定期受診について
現在の人工股関節や人工膝関節は20年以上の耐久性が期待されていますが、 人工関節の摩耗や骨と人工関節の間のゆるみ、 術後の感染などの問題は依然として完全に解決されたわけではありません。
特に、人工関節の摩耗やゆるみは進行するまで自覚症状がないことが一般的です。 そのため、手術後痛みがない場合でも1年に1度は外来を受診し、 レントゲン写真などの検査を受けることが重要です。
当院で手術を受けた患者さんには、術後の定期受診に対するご理解とご協力をお願いいたします。
ボーンバンク
近年、人工関節手術も増加する中で、人工関節のゆるみや磨耗に伴う再置換術や、初回手術において重度な骨欠損を有する患者さんが増加しています。これらの手術では大量の骨移植が必要とされ、患者さん自身の骨だけでは十分ではないことが多くあります。そのため、当院では施設内ボーンバンクを設立し、人工関節手術時に切除された骨を加温処理し、超低温で凍結保存しております。これにより、他の患者さんの手術での骨移植に利用することが可能です。
手術を受ける患者さんとその家族には、手術時に切除された骨をボーンバンクに提供していただくようにお願いすることがありますが、ご協力をお願いいたします。
医療費について
入院料概算例《いずれも片側の場合》
一般(70歳未満)
手術の種類 | 3割 | 限度額認定証使用の場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
ア | イ | ウ | エ | オ | ||
人工股関節 (THA) |
¥600,000 | ¥300,000 | ¥200,000 | ¥100,000 | ¥57,600 | ¥35,400 |
人工膝関節 (TKA) |
¥500,000 | ¥280,000 | ¥190,000 | ¥100,000 | ¥57,600 | ¥35,400 |
※ 別途食事代・室料差額等あり
高齢者(70歳以上)
手術の種類 | 3割 | 1割・2割 | ||
---|---|---|---|---|
Ⅲ | Ⅱ | Ⅰ | ||
人工股関節 (THA) |
¥300,000 | ¥200,000 | ¥100,000 | ¥57,600 |
人工膝関節 (TKA) |
¥280,000 | ¥190,000 | ¥100,000 | ¥57,600 |
※ 別途食事代・室料差額等あり
その他、多数該当などにあたる場合にはまた金額が異なりますので、詳しくは入院時にお尋ねください。 また、これは概算ですので、患者さんの状態によって金額の変動がありますことをご了承ください。
限度額認定証とは?
通常、一般の方が病院を退院する際には、窓口で3割の負担を支払った後、各保険者に申請することで、自己負担を超えた部分(高額療養費)が後日払い戻しとなります。
限度額認定証は、事前に申請することで、病院での支払いが最初から自己負担限度額(所得によって異なります)のみとなる制度です。人工関節手術は高額療養費に該当しますので、この制度の活用をお勧めします。
限度額認定証の手続きについて
①申請書入手
市町村または社会保険事務所(会社)から申請書を入手してください。または、当院の窓口でオンライン資格確認により限度額情報を取得できますので、ご希望の方は1階受付窓口にお声かけください。この場合、保険者への限度額認定証の手続きは必要ありません。
※医療保険に加入された時期や保険者よりオンライン資格確認が行なえない場合があります。その場合は限度額認定証の発行が必要となります。
②申請書提出
必要事項を記入し、申請書の入手先へ提出してください。
③認定書発行
限度額認定証が発行されます。
④提 示
さくら総合病院の受付へご提示ください。
所属医師
専門医・経歴 | |
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整形外科部長 兼 人工関節センター長 田中 歩 診療日時 股関節・膝関節専門外来 水:14:00-16:00 (予約のみ) |
専門医
所属学会
経歴
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